川上村では晴れが約束されたこの土曜日。久々に小川山へ出かけた。
本当は、この週末は苗場山に登ろうと話し合っていたが台風崩れの影響が残る新潟側は雨が降る可能性も高く、だから小川山に変更。
小川山は12年のGWに訪ねて以来だから7年半ぶり。
チョイスしたルートは屋根岩2峰マルチルートのセレクション。
僕はこのルートは開拓された翌年の82年に登っている。
この時はアッセントクラブの篠原英樹と国鉄遭対委員会の青木勉の3人で小川山で遊んだときに登ったもので、37年振りの再登だ。
一方、碓井さんは初めて。
金曜前夜に自宅を出て、途中、車中泊後、廻り目平に入ったのが土曜の朝8時半。
既に8割方駐車場は埋まった状況だ。
直ぐに朝食。
うどんと鶏肉の朝食をしっかりといただく。
普通ならこの時期、朝は肌寒いが、南からの風が吹き込む予報のこの日は東京で30℃超の予報。だから、ここ廻り目平も半袖でちょうどいい。
食事をしている時にクライマーに声を掛けられる。
それはYCCの船山さん。
船山さんとは2012年の年末から年始の間で発生した剣岳遭難事故後の捜索でお会いして以来だから6年振りだ。
お互い元気に近況を報告し合うことができてよかった・・。
山屋廃業状態の私たちにも関わらず声を掛けてくださったことがすごく嬉しい。
ゆっくりお茶の時間も満喫し、10時に出発。
歩きなれた遊歩道を上がっていき、カモシカ遊歩道とパノラマ遊歩道の分岐までは直ぐで右に折れ、パノラマコースに入って行く。
セレクションルートの取りつきまでのアプローチは覚えているはずもなく、ケルンが積んであるところから目星を付け2峰末端を目指すが、少し左に上がり過ぎてそら豆スラブ下部へ出てしまう。だけど、軌道修正し10時半頃、無事辿り着くことができた。
セレクションルートは人気ルートだし待ちが入ることを想定していたが、意外にも先行パーティーのラストが2ピッチ目半ばにいるだけで他にはいない。ラッキー。
準備を済ませ、11時にオリジナルのラインからスタート。
37年前に登った時は、僕がこの1ピッチ目をリードしているが、その時はグレード以上に難しく感じたことが記憶としてあったが、今回も同様。全力だった。
碓井さんには飲み物と二人分のアプローチシューズに上着類を持ってもらってたから、それなりに重く、ここではテンションとなった。
この頃、後続のガイドパーティーがオリジナルではなく左側のラインから上がってくる。
2ピッチ目。
縄文人の篠原富和氏らの開拓によるこのルートは、当時のこのスラブはRCCボルトだったはずだが、今はハンガータイプにリボルトされていて安心。
弱点がどこかしらにあり、登った感のあるピッチ。
3ピッチ目は右へ巨大なチョックストーンをくぐって奥向こうでバック&フット。
碓井さんは股間にザックをぶら下げ登ってきた。
続く4ピッチ目でトラブル発生。
このピッチの終了点少し下で僕が迂闊にも1番の赤キャメロットをタイトに決めてしまったため碓井さんが回収しようとしてもできない状況に。
頑張ってもらうけどどうにもならず、そうこうしているうちに後続のガイドパーティーのラストも下の終了点に上がってきた。
そんなだから、ひとまず碓井さんには上に来てもらい、後続パーティーに先に行ってもらった後で僕が降りて回収することにする。
ちなみに、このピッチ、下部がグレード以上に奮闘的。
だからジャミングテクニックが無いに等しく、しかもザックを背負ってもらってる碓井さんはかなり苦労するはずと予想していたが、予想通りだ。
で、なんと「引っ張って!」って言葉が発せられた!
これまで24年半、一緒に登ってきて、「張って!」は何度も聞いてきた。僕も発してきた。だけど「引っ張って!」は初めて壁中で聞く言葉だった。たぶん一度も聞いたことがないと思う。そんな言葉に思わず笑ってしまった。
風もなく暖かく初秋って感じの眺めを、しばらくの時間、満喫。
落葉松の紅葉はもう2週間程度かかりそうだ。
ガイドパーティーのラストが上がってきて下が空いたことで僕が降りて行き、ロープにぶら下がり両手フリーの状態でガシガシやってなんとかキャメロットを回収。ほっとした。
5ピッチ目は途中ワンポイント露出感がある。ここに唯一、ハーケンが残置されている。きっちり打たれているようだし、安全のためにシュリンゲを通しプロテクションにして上がりこんでいき、このピッチの終了点一つ下の立木でピッチを切る。
ガイドパーティーは愛知県からの遠征。明日は男山に行くとのこと。
小川山からの帰路、右手に見事な三角山が見えるが、記憶ではこれがその男山だったはずだが、歩きかと問うと、岩登りだとおっしゃってた。
続く6ピッチ目は一旦木の根がはびこる溝を5m下って左向こうへ進む。
こんな感じでオポジションスタイルでよちよちとトラバース。
僕はここのパートでは、ガイドパーティーのトップがこの真上を登っていたからルーフの下に入り込んで身を隠すように暫く退避した。ザックを背負っている碓井さんは、上手く外側のスタンスを拾いながら、体を中へ入れ過ぎないように登ってきた。
楽しいピッチだ。
7ピッチ目。
ラインは2通りある。左は垂直に近いハンドサイズのクラック。右はレイバックで登れそうな易し目に映るライン。
ガイドブック「日本のマルチピッチ」では右のラインにセレクション・オリジナルと記載があり、僕もこちらを登って14時ちょうどに終了。
長い時間、クライミングシューズを履いていたから足の指先は痛い。すぐにアプローチシューズに履き替え下降に移る。
下降は60mロープ1本を二つ折りで。上から見て右側へ斜めにラッペルし、途中、松の木で2度目のラッペルで歩ける傾斜になる。
取り付きまでは壁沿い、壁際近くに続く踏み跡を辿って10分強。
無事、デポしたところに戻り着く。
パノラマコースまでの下降は適当に下ってすぐ。
途中、ボルダーで賑わう大岩を見ながら駐車場に帰り着く。
泊まりたくなるいつだっていい感じの廻り目平。
走り出す前にコーヒーを入れて、しばしティータイム。
不手際でちょっとしたトラブルもあったけど、久々のマルチ。楽しい一日だった。
ちなみに、回収に手こずった1番のキャメは下の写真のようにトリガーワイヤーが外れていたことが原因。
セットしたキャメの奥側のカムのワイヤーがトリガーから外れていて、トリガーを引いても閉じない状態だった。
狭いクラック奥に突っ込んでしまってたから、手前側のカムが閉じ切って居るように見え、これが原因だって思い違いをして、そちらばかり指先で(ナッツキーを持参してきてなかった)更に閉じようと努力したり、手前に、下に移動させようとしていて、ふと奥側のワイヤーが外れていることに気づきこれを指先で引っ張るといとも簡単にキャメが外れた。
うっかり奥に突っ込んだこともさることながら、こんなメカニカルな部分に頭が行っていなかったことも原因なわけで、しばらくカムを使ったクライミングから離れていたことが本当の意味での理由なんだと反省・・。
ま、だけど天気に恵まれ寒くも暑くもない爽やかな気候の中でクライミングを楽しめたことは幸せだった。